本研究の成果は大別すると次の三項目に要約される。 1.中空室内空間の照度分布と光束保存性 衝立やひさし等の遮光板が設置されていない中空室内面の照度分布特性をまず最初に解討した。点光源や直線状光源を用いて完全拡散反射特性を有する室内各面の照功分布特性をモンテカルロシミュレ-ションで求めた。その結果、理論計算値とよく一致することが明らかになった。光子束相互反射に伴う光束保存性について検討したところ、球形光束計において広く知られている理論計算値とよく一致することが確認できた。 2.凹閉面室内空間の照度分布と光束保存性 遮光板が設置され室内各点が相互に見通すことができない、いわゆる凹閉面室内空間の照度分布をMCSで求めた。遮光板による影が明確に現われ、照度分布特性に及ぼす影響が変動係数によって検討された。その結果、遮光板によって作られる影により照度分布の変動が著しい場合の評価には、均せい度よりも変動係数が優れていることが明らかになった。光束保存性については、中空室内空間と同様な精度で理論計算値と一致し凹閉面室内空間においても成立することが確認できた。 種々の配光をもつ光源と反射特性を有する室内空間の照度分布特性 一般に、実用されている照明器具の配光は非対称であり、かつ、室内面の反射特性は鏡面反射率を含み簡単な関数で記述できない場合が多い。それ故、これらの配光ならびに去射特性を離散的な確率事象とみなし単位角度ごとの階段関数で模擬して近似的に取扱った。その結摘、連続確率事象として計算したものとよく一致した。 以上の結果から、MCSによる室内照度設計は室内構成が多様な場合や配光ならびに反射特性な唱が複雑な事例において、特に威力を発揮することが確かめられた。
|