研究概要 |
1.ディジタルフィルタをアナログの回路理論を基にして設計しようとの考えから,ウエ-ブディジタルフィルタが提案された。ウエ-ブディジタルフィルタは分布定数回路理論を用いて構成できることを以前に示した。ディジタル信号処理において,複素ディジタルフィルタが注目されている。一方アナログ回路では虚数抵抗という理論上の回路素子を用いれば,複素係数回路が構成できることが知られている。 本研究では,虚数抵抗を用いることによる複素係数分布定数回路について考察し,それを複素係数ウェ-ブディジタルフィルタに変換して,複素ディジタルフィルタを求めている。その結果,安定な複素フィルタや無損失な基本区間が得られるため素子感度の低いフィルタなどが得られた。また,従来では困難と考えられる低次数で遮断特性の鋭いフィルタも容易に設計できることも示された。 2.複素係数の回路はこの世の中には存在しない理論上のものと考えられていた。ところで,量子力学ではシュレ-ディンガ-方程式を用いているが,実はその方程式は虚数の係数を含んでいるので,複素係数の方程式である。そこで,シュレ-ディンガ-方程式を満たす振幅を電圧波と仮定し,その電圧波が伝播する現象を表わす等価回路を求めたところ,虚数抵抗とキャパシタとが分布している分布線路とできることが示された。その等価回路を用いると,超格子構造で実現されるトンネル共鳴エネルギ-や固有エネルギ-が極めて容易に求められる。 デバイスの超小形化によって可能となる超格子などの超高速デバイスは量子現象的な解析が必要であるが,上に求めた等価回路によって時間域のシミュレ-ションも可能になることも示されている。
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