岩石・コンクリート・セラミックスの破壊現象を力学的に取扱うためには、巨視クラック先端に存在するフラクチャープロセスゾーンの力学モデルを構築することが必要である。本研究の目的はこれらの材料における破壊のメカニズムを解明し、破壊現象を説明、予測しうる力学モデルの確立およびその妥当性の実験的検証を行うことである。 まずフラクチャープロセスゾーンをDugdale型モデルによりモデル化し、支配的要因と考えられるクラック先端近傍の応力分布形のみを評価する簡便なモデルを提案した。 次に、くさび載荷型供試体の破壊実験をモルタルとコンクリートについて行い、巨視クラックが安定に成長する供試体表面における変位をレーザースペックル法により測定することにより、巨視クラックの長さを求めた。レーザースペックル法による測定誤差は、1〜2μmであった。載荷点変位が増大するに従い荷重が増大し、巨視クラックが発生・成長する。やがて最大荷重を迎え、荷重は徐々に減少する。裸眠でクラックを発見できるのは最大荷重付近で、ノッチ先端の開口変位が50μm程度になってからであり、このときの巨視クラックの長さは5〜7cmであった。 モルタルとコンクリートでは、引張強度・最大荷重がほぼ等しいにもかかわらず、最大荷重におけるノッチ先端の開口変位、巨視クラックの長さは大きく異なっていた。その原因は引張軟化特性の違いにある。 得られた荷重とクラック長の関係を簡便モデルによる予測と比較した。両者は良好な一致を示しており、簡便モデルによる破壊現象の予測、例えば最大荷重の予測の有効性が示された。用いたDugdale型モデルは主に巨視クラック面における骨材等による応力伝達をモデル化したものであり、モデルによる予測が実験結果と一致するということは、破壊の主要メカニズムがそのブリッジングであることを示唆している。
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