研究概要 |
本研究は,東京都市圏の交通問題をロンドンとの比較の基に明瞭にすると共に,問題の原因がどこにあるのかについて検討し,東京都市圏の交通問題への対策についての示唆を得ることを目的としている。 ロンドンのデ-タについては、芦沢哲蔵が直接ロンドンの交通省等から収集してきた詳細な資料,例えば,ロンドンのパ-ソントリップ調査のオリジナル磁気テ-プ等を基に,掘り下げた比較研究を行った。 比較分析の結果,東京の人口密度と人口規模の大きさ及び職住の分離が浮き彫りになった。道路と鉄道の効率性については,東京の交通速度はロンドンに比べて極めて遅いことがデ-タとして裏付けられた。東京の道路の走行速度の低さは,人口密度と人口規模の巨大さによる交通発生密度の高さ,及び道路網の計測から分かった広幅員道路の割合が低いことに起因するものとされた。通勤圏の広がりについては,中心部通勤率,中心部通勤人口密度を設定して検討し,ロンドンの通勤圏は東京よりも広いことが示せた。その理由としては,高速道路と鉄道の高速性が考えられる。パ-ソントリップ調査結果の磁気テ-プ等を用いた集計からは,ロンドン居住者の通勤時間の短さからくるゆとりある生活,及びトリップの目的構成として,業務目的は少なく,娯楽や社交目的のトリップが多く,生活を楽しんでいる状況が浮き彫りになった。これらを踏まえて,東京の今後の在り方としては,ロンドンの様に職住の接近,郊外部での就業地開発,幹線道路や鉄道の高速化の努力の必要性,ロンドン居住者のような生活重視の価値観の浸透によって東京問題の解決も進むこと等の考察をした。バス交通については、東京のバスの走行環境と事業者の両方において,ロンドンと比べての改善の余地が指摘でき,改善の方向が示せた。
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