研究概要 |
本研究では、地震活動性,建築物の地震時応答及びその崩壊性状等の構造計画上の知見だけではなく、建築計画,設備計画に関する評価も踏まえた、建築物としての機能を考慮した最適耐震構造計画手法に人工知能的手法を適用し、より人間的な判断機構とマンマシンインタ-フェ-スを備えたシステムを構築することを試みた。まず、初年度には、最適耐震構造計画エキスパ-トシステムのプロトタイプを構築した。このシステムは、数値計算を行う部分(応答解析)と推論を行う部分の2つのシステムからなり、推論部分は、知識ベ-ス部分と推論エンジン部分で構成されている。知識ベ-スの構築は、人間の主観性を考慮するために、ファジィ集合理論と言語表現を用いて行った。ここでは、1つの設計変数に対して最適化を行うことができる。また、対象構造物は中低層鉄筋コンクリ-ト構造物とした。次年度では、プロトタイプシステムを基に、複数の設計変数に対して最適化が行える様にシステムを拡張し、さらに数値計算を行うシステムを推論システムと結合し、一貫システムを構築した。また、構造工学の分野では、連続的な物理量を取り扱うことも多いため、ファジィ集合理論の帰属度関数を用いた、画像表現型最適耐震構造計画システムの構築も併せて行った。さらに、ユ-ザ-の主観性が大きく影響すると考えられる階層構造モデルについても、予備的アンケ-ト調査を行い、構造技術者の主観性及び階層構造モデルの設定に関する検討を行った。最終年度では、画像表現型のシステムに関して、ユ-ザ-インタ-フェ-スの改善として、階層構造モデル,建物情報入力システムを附加した。さらに、同手法を中低層鉄骨建物に適用したシステムの構築を行った。以上により、最適耐震構造計画を支援するエキスパ-トシステムの構築に関して、知識ベ-スの作成,主観性評価手法,システム構築手法等の基本的知見や方法論を得ることができた。
|