研究概要 |
最終年度の纒めの要点は以下の通りである。 1)出流川下流の田源鉱山で帯状分布を示す会沢層と東側の上部石灰岩層との関係は一部不整合,一部衝上断層であると考えられる。2)葛生地域の出流層を構成する玄武岩類および鍋山累層を貫く岩脈状玄武岩類(塩基性岩類)のXRFによる全岩化学分析,顕微鏡観察などの進捗に伴い,前者は海洋島型のアルカリ玄武岩であるのに対し,後者は火山孤型玄武岩の性格を持つことが判った。 3)田原鉱山において,上部石灰岩層(1部ドロマイト質)を貫く玄式岩岩脈に沿って,いちじるしい白色化を被り,暗灰岩ドロマイト質石灰岩がブルース石-方解石-ドロマイトの鉱物組み合せを持つ変質岩となっているが,ブルース石の存在を光学顕微鏡下で識別できなかった。今度EDS法による背面散乱電子像(組成像)の観察によりその微小粒子(大きな数μm)が認められた。 4)三峰地区をほぼNNEに走りSW側にプランヂする向斜軸により規制される向斜構造は単純なものでなく,複向斜であり,三峰断層はこの複向斜構造の小背斜部に発生した西落ちの正断層であることが判った。 5)葛生地域の南部に存在する“葛生中央断層"の北側は岡田鉱山付近で行方不明となるが,恐らく落差を減じ消滅するものと考えられる。
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