研究概要 |
本研究は強磁性金属FeおよびCo中における種々の溶質原子の体拡散係数を広い温度範囲にわたって精密に測定し、溶質体拡散におよぼす磁気変態の影響と溶質原子磁気モ-メントとの関係を明らかにしようとするものである。Fe中の置換型溶質原子^<59>Fe,^<57>Co,^<51>Crおよび^<63>Niの体拡散およびCo中の^<57>Coの体拡散の実験には10^<-23>m^2s^<-1>オ-ダ-まで測定可能な高周波スパッタリングによるシリアルマイクロセクショニング法を用いた。これらの体拡散係数のアレニウスプロットはキュリ-温度直上より直線性を示したが、Fe中のCoの場合のみキュリ-温度以上まで磁気的影響が示された。Fe中の置換型溶質拡散における磁気変態の影響はCoの場合最も大きく、Crの場合最も小さい。このことはFe中のCoの磁気モ-メントがプラスの大きい値であるのに対し、Crのそれがマイナスの値であることによるものと思われる。侵入型溶質原子の拡散としてCo中のCの実験を残留強度法を用いて行なった。さらにFe中のCとNの拡散についての従来のデ-タを詳しく検討した。その結果、これらの侵入型溶質原子の拡散においても磁気変態の影響があることが確認された。さらに、その程度は置換型溶質原子の拡散におけるものと同様に表式化することができ、しかもCo中のCの拡散およびFe中のCおよびのNの拡散における磁気変態の影響はいずれもCoの自己拡散やFeの自己拡散におけるものより大きいことが示された。
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