研究概要 |
本研究ではフラックス融体中の窒素の物理化学的性質を知るために,製鉄用に用いられる塩基性から,ガラスに用いられる酸性までの広い組成範囲にわたって,各種フラックス中への窒素の溶解度を化学平衡法により測定した。窒素溶解度におよぼすフラックスの組成,酸素分圧,窒素分圧,温度依存性を調べ,以下の知見を得た。 1.CaO-CaF_2系フラックス中への窒素の溶解度は1375℃で酸素分圧が10^<-6>atmから10^<-11>atmまでは一定で,それ以下ではN^<3->として溶解した。 2.CaO-SiO_2系フラックス中へのフリ-ナイトライドイオンおよびインコ-ポレ-トナイトライドイオンの溶解度を1550℃で調べた。フラックスの塩基度が低い場合には,インコ-ポレ-トナイトライドイオンとして,塩基度の高い場合にはフリ-ナイトライドイオンとしてフラックス中に窒素が溶解することが明かとなった。 3.CaO-CaF_2-SiO_2系フラックス中への窒素の溶解度を1300℃の液相線上で測定した。SiO_2飽和組成からCaOが増加するに従い窒素溶解度は減少し,3CaO・2SiO_2組成で極小となる。3CaO・SiO_2,2CaO・SiO_2両飽和組成で最大となり,さらにCaOが増加すると窒素溶解度は減少した。また,CaF_2の添加によりフリ-ナイトライドイオンが増加することがわかった。 4.1450℃でCaO-MgO-SiO_2系,BaO-MgO-SiO_2系フラックス中への窒素の溶解度の組成依存性を調べた。CaO/MgO,BaO/MgO=1の組成での窒素溶解度を比較すると,CaO-MgO-SiO_2系のほうがBaO-MgO-SiO_2系に比べて窒素溶解度は大きい。また,両者ともにSiO_2が増加しフラックスが酸性になると,フリ-ナイトライドイオンが減少し,インコ-ポレ-トナイトライドイオンが増加した。
|