研究概要 |
機能材料・構造材料のいかんを問わず良好な特性を有する金属間化合物が数多く作り出されている。しかし,それらの多くは延性に乏しく,それが実用化を阻む原因となっている。ここでは,磁芯材料としての有望なDO_3型金属間化合物(6.5%珪素鋼)をとりあげ,その脆性の原因を解明し,延性改善指針を得ることを目的として研究し,次の結論を得た。 1.延性・脆性遷移挙動:(1)本合金では,約600Kより低温では脆性破壊を示すが(B領域),それ以上では延性となる(D領域)。但し,延性領域においても,低歪速度では再び延性と脆性破面が混在したD/B領域となる。(2)BとD領域の境界付近の温度では,歪速度が増すほど,延性が増加し,高歪速度では完全な延性を示す。この結果から,十分な高速で加工すれば,本合金も塑性加工可能であることおよびBとD領域の境界温度が更に低温へ移動することが示唆される。 2.組織観察:(1)D領域のみならずB領域でも,{110}<111>および{112}<111>すべり系が活動しており,多結晶が延性を示すのに十分な数のすべり系の活動がおきている。このことは,この材料は本質的には塑性変形可能であることを示す。(2)B領域では粒界,粒内の多くの場所に亀裂が発生する。これに対してD領域では,特殊な場所にしか亀裂が発生しない。この違いが2つの領域を分ける原因と考えられる。 3.圧延:1の予測を実証するために,種々の条件で圧延を行なった。その結果,低速圧延では亀裂が生ずるが,高速圧延では亀裂を発生することなく塑性加工できることがわかり,予測が立証された。また473Kまで温度を下げても圧延可能であることが明らかになった。
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