研究概要 |
本研究では高エネルギ-型ボ-ルミルを用いたメカニカルブレンド法により,通常の溶解,疑固法では作製困難な融点差および比重差の著しく異なる材料に対して均一な組織を有する複相粉末を作製した後,バル化し,その組織と諸特性を明らかにすることを目的とした。 メカニカルブレンド(MB)法により作製したSiーPbおよびSiO_2ーPb粉末をバルク化した試科はSiおよびSiO_2のマトリックス中にPbが均一に分散した組織を示した。一方,SiO_2ーPb_<60>Bi_<40>では,バルク化温度がPb_<60>Bi_<40>の融点以下ではPb_<60>Bi_<40>がSiO_2中に微細分散した組織を示すが,融点以上はSiO_2とPb_<60>Bi_<40>の多層組織を示すことを見出した。バルク材は2ー12μΩmの高電気抵抗を示し,その抵抗値は温度の低下に伴いほぼ直線的に減少することが分った。また,バルク材は超伝導性を示し,Pb系では7K,Pb_<60>Bi_<40>系では9KのTcを有し,PbおよびPb_<60>Bi_<40>のTcとほぼ同じであるが,Hc_2はPb系では約30倍,Pb_<60>Bi_<40>系では約3倍の向上が見られた。これらの特性はSiおよびSiO_2とPbおよびPb_<60>Bi_<40>の単なる複合則では説明できず,本方法により著しく特性の異なる材料を複相化することにより得られた微細組織を反映したものであり,微細化と界面の効果が寄与していると考えられる。また,多層組織を有するSiO_2ーPb_<60>Bi_<40>では特性に異方性が見られた。 さらに,このプロセスをYーBaーCuおよびBiーSrーCaーCu合金に適用し、得られたバルク材を酸化することにより,90K以上に零抵抗温度を有する酸化物超伝導体が得られることが分った。 以上のように,著しく特性の異なる材料をメカニカルブレンド法を用いて複相化することにより特異な性質を有する材料が得られることが分った。
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