振動及び騒音の発生に伴う各種の害は非常に多く、これらの防止或は軽減するには構造部材に振動減衰能が高い防振合金を用いることが有効である。しかし、構造部材が高温にさらされる場合には現存する防振合金の減衰能は急激に小さくなるので使用できない現状である。また防振合金の高温度特性に関する研究も非常に少ない。そこで 1.Fe-Co合金にMo、Cr、V、Al及びSiを添加した合金を溶解、鋳造、鍛造、加工して丸棒とする。900℃で2時間加熱した後、常温まで徐冷する。 2.逆吊り捩り振子法により常温から700℃において自由振動させ、その減衰を波形記憶装置に記録した後、波形解析処理を行い内部摩擦を求める。 3.常温から700℃において、電気炉(科学研究費補助金により高真空排気装置を購入)及び交流用磁化コイルを用い、磁気的ヒステレシス・ループを波形記憶・解析装置(インターフェース・プロッタ及びそのインターフェースを購入)により測定して、内部摩擦との関係について研究する。 4.常温ならびに650℃において、引張試験機を用い機械的性質を求めて、内部摩擦との関係について研究する。 以上の研究計画を遂行した結果Fe-Co基合金の内部摩擦は500〜700℃において常温の値より10倍ほど大きい460×10^<-3>で非常に高くなっていること、磁気的ヒステレシスの解析から、内部摩擦が高くなっている温度で保磁力および磁化の立ち上がり大きくなっていることが判明した。そこでFe-Co基合金の高温度の高い減衰能は大きな磁化の非可逆性から生じていることが明かとなった。一方、機械的強さは通常の合金と同様に温度上昇とともに低くなるが、耐熱性に関してはAlおよひCrなどが有効である。Fe-Co基合金を高温用防振合金とするためには耐酸化性についてさらに研究の余地があることがわかった。
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