研究概要 |
本研究はβ型チタン合金とその溶接部の材質改善を行うとともに一層の材質強化を目指したものである。 1.時効硬化したβ型チタン合金をティグ溶接すると熱影響部において硬度の低下つまり軟化域が生じる。これはα相の固溶のためであることを明確にした。そして溶接後773Kで86.4ks時効処理すると、溶接熱影響部は母材にくらべはるかに硬化した。その原因を詳細に調べるため、溶接部を想定した熱処理を行った結果、1573Kと溶接ボンド部に相当する高い温度で溶体化処理した場合、従来の1073K溶体化材にくらべ673Kおよび773Kでの時効硬化速度および硬化が大なることが判明した。しかしボンド部近傍は結晶粒が粗大化し、粒界破壊が生じ易く、しかも伸びが極端に小さくなることがわかった。 2.本合金とその溶接部の一層の材質強化を計るため、673Kで時効し、そして773Kで時効する二段時効処理、および溶体化処理後,圧延加工し、そして時効処理をおこなう加工熱処理を考案した。これらの熱処理により時効硬化が一層促進され、通常の時効処理にくらべ短時間でしかも高強度,高硬度が得られた。 3.水素誘起割れにおける組織および水素の挙動について検討した。その結果、溶体化処理材では、β相組織であり、水素はβ相中にかなり固溶され、水素化物は生じにくいが、溶体化処理後、673K、および773kで時効処理した試料はα+β組織となり、水素はβ相中に主に侵入し、そして微細なα相中へ拡散し、α相中に水素化物が生じて,水素誘起割れが生じた。この事象はα+β組織のTi-6AI-4V合金と同事象であった。これらのことから時効した高硬度、高強度β型チタン合金は水素化物を生成しやすく、とくに溶接部のごとく時効硬化が促進された領域は顕著に水素誘起割れが生じることがわかった。
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