研究概要 |
Cu系酸化物超伝導体は形式電荷としてCu^<3+>(酸素にホールがありCu^<2+>となっている)の存在や酸素欠損が広くみられるとして有名である。高酸素圧下での合成を行い上記のホールや欠損のコントロールを行い、超伝導物性にどの様な影響がみられるかを検討した。 1.LnBa_2Cu_<3-X>M_XO_Y系(Ln=Y,Gd,M=Fe,Co,Ni),x=0〜3までの範囲で固溶体を作り、各種の処理、測定を行った。その結果、(1).本来xの増加とともに斜方→正方への転移があると言われていたが、それが実はマイクロドメインの生成によるもので、マクロ的には平均構造を見ているという事、(2).xの増加とともに転移点が低下が一般的であったが酸素圧の処理により、yは7をこえ、転移点は回復する事が分かった。M=FeでX=1.0でも3万気圧の酸素圧処理で80Kまで上昇する事が分かった。 2.YBaSrCu_3Oy系、この系は室温超伝導が見られたという事で注目されたが、その様な現象は我々は見い出さなかった。しかし、(1).高酸素圧処理でyが7.0をこえる。この事はYBCO系ではめずらしい。しかも斜方→正方へと相変化をおこす。(2).奇妙な事にホール濃度は減少する。しかし、値はYBa_2Cu_3O_7と同じ程度でTcが10K低く80Kであった。又、正方晶が実はマイクロドメインによる平均構造である、等、興味深い知見が得られた。 3.115K級Bi系超伝導体、Bi-Sr-Ca-Cu-O系にPbを添加する事で100%の115K超伝導体を得た。Pb_<0.4>Bi_<1.7>Sr_<1.9>Cu_3Oyの組成に近い。各種酸素圧処理を行った結果、PbがCa_2PbO_4の形で表面に折出しPbなしの115K級超伝導体が残こった。C軸方向に長さの減少がみられ、Cuの値数は上昇したが反対にTcは数度低下した。この様に高酸素圧処理により数々の新しい現象が見い出された。
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