研究概要 |
電気化学反応における磁場効果として,これまで不斉収率の向上や電解質のMHDフロ-による反応経路および拡散限界電流への影響などが報告されている。しかしながら,電極反応に直接関与する反応物や触媒の磁気的性質には殆んど注目されていない。そこで,本研究では電極触媒としての金属ポルフィリンの磁気的性質が磁場中での酸素還元にどのような影響を及ぼすかについて検討した。金属ポルフィリンには,水不溶性のメソ-テトラフェニルポルフィリン(TPP)並びに水溶性のメソ-テトラキス(4ースルホナトフェニル)ポルフィリン(TPPS)およびメソ-テトラキス(1ーメチルピリジニウムー4ーイル)ポルフィリン(TMPyP)のCo(III),Mn(III),Fe(III)錯体を使用した。 1.水不溶性金属ポルフィリン(TPPーM)における磁場効果 磁場効果は金属ポルフィリン被覆グラッシ-カ-ボン電極を使用して検討した。すなわち,酸素飽和0.1MNaOH中でのサイクリックボルタモグラムを磁場がある時とない時とで測定した。金属ポルフィリンの磁気的性質(磁化率)は異っているにもかかわらず,サイクリックボルタモグラムに殆んど差がなく顕著な磁場効果は認められなかった。 2.水溶性金属ポルフィリン(TPPSーM.及びTMpyPーM)における磁場効果 磁場効果は0.2×10^<ー3>Mの金属ポルフィリンを含む酸素飽和0.1MNaOH,グラッシ-カ-ボン電極でのサイクリックボルタモグラムを磁場効果がある時とない時とで測定した。この場合,金属ポルフィリンの磁化率に依存した明確な磁場効果が認められた。即ち,電極触媒として電極反応に関与する水溶性金属ポルフィリンの磁化率の増加と共に酸素還元の拡散限界電流は増加した。この結果は,酸素の拡散が金属ポルフィリンのMHDフロ-によって効果的に促進される事,酸素還元が金属ポルフィリンの分子表面,恐らく金属サイト上で起る事を示唆している。
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