研究概要 |
ゴスタチンはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの特異的阻害剤である。微生物が産生し、ジヒドロ-チ-ピリドン骨格を有するこの化合物を立体特異的に化学合成するのが本研究の目的である。ジヒドロ-チ-ピリドン環の合成法は文献にいくつか報告されているが、いずれも本化合物の合成には不適であったので、ジヒドロ-チ-ピリドン環の合成法を新規に開発することにした。基本戦略はβ-アラニンとアセチレンの縮合である。この生成物の三重結合をカルボニル基に変換し、アミノ基と分子内的に縮合環化させる。生じたシッフ塩基を熱的に異性化させることにより目的物を得る。この合成経路の妥当性を検証するためにまず次のような実験を行った。N-t-ブトキシカルボニル-β-アラニン イソオキサゾリジドとクェニルアセチレンをブチルリチウムの存在下低温で反応させ、1ー(Nーtーブトキシアミノー3ーオキソー5ーフェニルー4ーペンチンを60%の収率で得た。この化合物を酸化水銀で処理することにより収率70%で1-(N-t-ブトキシアミノ-5-フェニル-3,5-ペンタンジオンを得た。この物をトリフロロ酢酸で処理した後中和することによりシッフ塩基を生成させた。これを150℃に加熱することにより2-フェニル-5,6-ジヒドロ-4-ピリドンを得た。このようにしてジヒドロ-4-ピリドン環の一般的合成法を確立したので、次にゴスタチンの合成に移った。出発原料は2,3-ジアミノプロピオン酸とアセチレンカルボン酸で、両者に適当な保護基を付けた後反応に用いた。現在合成の後半の段階が進行中で、遠からず全合成が完成する見通しである。今後は同様な経路で置換基の異る種々のゴスタチン誘導体を合成し、アミノトランスフェラーゼに対する阻害作用を検討するとともに、臨床への応用の可能性を検討する予定である。
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