イネ科作物の幼穂分化は日長や温度などの環境条件に支配される面が大きいが、株内出穂日の変異にも品種間差があり、主稈と分蘖の間の差や分蘖相互間の差によって日本稲の十数品種はいくつかのタイプに分類できることが知られている。本研究では、イネ・ムギ数品種の出穂パターンが年次や栽培条件によってどの様に影響されるかについて調査し、次の結果を得た。 1.イネの播種から出穂までの日数(到穂日数)は年次によって変動したが、分蘖間の相対的な関係には品種固有のパターンが認められた。 2.播種時期を変えた場合にも到穂日数には差がみられたが、分蘖間の相対的な関係には変化がみられなかった。ただし、最初の出穂する分蘖の着生節位は4月播よりも5月播の場合に低く、止葉葉数との関係が示唆された。また、一次分蘖に対する二次分蘖の出穂日の遅れは、二次分蘖の葉数が一次分蘖のそれよりも増加していることとの関係が深い。 3.ポットによる直播栽培では低節位からの分蘖が認められたが、これらの分蘖は概して主稈のそれよりも遅かった。また、ガラス室で生育させた株の出穂は屋外のものよりも4〜5日早かった。両品種とも主稈の出穂促進が大きく、分蘖の出穂は主稈よりも2〜3日遅れた。 4.葉齢指数約90の時期の幼穂長にも出穂日の差と同じような関係があるので、出穂日の差は幼穂分化時期の差異を示すものと推定された。 5.ムギの一次分蘖の出穂日は葉位が高いほど遅れる傾向を示したが、これは葉数の増加に対応していることが認められた。 6.一次分蘖の出穂日の分蘖節位に対する関係は1〜8葉の範囲ではイネとムギで逆の傾向を示した。 7.これらの点から考えて、イネ・ムギの花成誘導は、一次的にはそれぞれの茎の生理的な齢によって支配されているものと推定された。
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