研究概要 |
作物根の保守的形質(環境変動によっても変わり難いもの)と可塑的形質(環境変動に応じて容易に変化するもの)を明らかにし,裁培における根の管理や育種計画への根の形質導入に資することを目的に実験を行なった.種子根の形質発現の変更程度や根の形質発現に対する地上部関与の実態を明かとするために,統一の育成に関わったユ-カラ,台中在来一号,1Rー8,Peta,低脚烏尖を用い,根端培養法,水耕法並びに土耕法で生育させためばえ種子根で実験を行なった.その結果以下のことが明かとなった;1.根端培養法において根の形質を完全に発現させるには,28℃,暗黒条件で3週間必要であった.2.根端培養法においてもL型側根とS型側根の発生はどの品質でも認められ,遺伝的な形質であることを確認した.3.根端培養法において台中在来1号と低脚烏尖との間に根系形質における類似性を認めた.4.水耕しためばえ種子根の形質発現に,光が照射された地上部の存在が影響を与えることを認めた.光が照射された条件下での地上部は根系の形質発現における個体間変異を顕著に縮小する働きがあった.5.湛水土壌裁培しためばえ種子根では品種間の遺伝的変異幅は縮小され,品種間差異は不明確となった.6.各品種の種子根系において,根長形質は根数形質に比べて保守的であった.最も保守的な形質は1次側根密度であった. 以上の検討から,今後は根系の生育条件に水ストレスや塩類ストレスを加えることによって,各品種の遺伝子型の表現系変異を拡大させることができ,根系形質の保守的並びに可塑的形質の評価が可能であると考えられた.
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