研究概要 |
63年度,元年度の2年にわたり,日本のみならず中国,台湾,韓国も含め数十品種を比較栽培し,ネギ品種・品種群の類縁関係を解明するべく,種々の形質について調査検討した. 1.抽台・開花特性については,一般的に寒地に分布する品種ほど抽台は早く,開花までの期間は長い傾向が認められた.また低温伸長性の大きい品種ほど抽台が遅いという新たな関係を見いだした. 2.ネギの葉身のエピクチクラワックスには,大別して樹枝状,プレ-ト状,団子状の3種があることを認めた.そしてこのエピクチクラワックスの形態に品種間差ならびに同一品種でも季節による違いがあることに着目し,夏季のワックスの形態が品種分類の指標として有効であることを提唱した. 3.アイソザイム分析をPGM,GPI,ADH,LDH,MDH,ESTなどについて行い,特にGPIでは葉齢や部位に関わらず品種に特異的なバンドが得られ,このバンドパタ-ンに基づく分類は生態学的あるいは形態学的な分類結果とよく符合することを明らかにした. 4.プロリン蓄積量については,高温乾燥時に概して北方系の品種で南方系の品種に比べ多くなることを認めた.さらに他の実験の結果と合わせ,高温乾燥時にプロリンを多く蓄積する品種ほど高温乾燥ストレスに対する耐性が高く伸長性が優れると考えられた. 5.メインテ-マの一つであった耐雪性については,予備調査を開始していた62年,ならびに63年,元年度いずれも異常暖冬のため比較栽培した福井でもほとんど降雪がなく,十分な解析をするには至らなかった. 6.今後さらに,品種間の生態反応差がいかなる生理物質の消長に由来するのか検討を進める予定である.
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