カキ果実は典型的なクライマクテリック型の成熟を示す果実に比べると、生育後期の呼吸活性が低く、エチレン生成も非常に少ない。このため、カキ果実の成熟にエチレンがどの程度関与しているのかは明らかでなく、成熟過程での果実内の生理的変化も不明瞭である。そこで本研究はこれらの点を明らかにする目的で行った。1.カキ果実の成熟とエチレンとの関係を調査したところ、カキ果実の成熟過程とエチレン発生との密接な関係を認めることはできなかった。また、外生的に与えたエチレンに対しては、第3期の果実においてのみ成熟促進効果を認めた。2.エチレン以外でカキ果実の成熟に関する可能性のある要因として、ABAとジベレリンの植物ホルモン、及び果実内のタンパク組成の変化を想定し、それぞれの成熟に伴なう動態を調査した。第3期にはいると、ABA含量は増加する傾向を示し、ジベレリンの活性は低下した、特にジベレリンの活性低下は顕著であり、これらのホルモンが成熟に向かう果実内の代謝変化を引きおこす要因としての可能性が示唆された。さらに、果実内のタンパク組成も第2期から第3期への移行期に著しく変化することが確かめられ、とくに成熟が進むにつれて顕著に増加する特定のタンパク成分が確認された。3.ヘタ片除去処理や温度処理により果実の成熟様相を変化させた場合、その変化がどのような機作によってもたらされているかを調査することで、成熟に関与する要因を明確にしようとした。その結果、ヘタ片除去によって果実の肥大・成熟を抑制したところ、果実中のショ糖の加水分解が阻害されていることが明らかとなり、成熟開始とショ糖の加水分解に関与する酸素との関連性が示唆された。以上の結果により、カキ果実でも第3期にはいると成熟に伴なう種々の生理的変化をおこしていることが明らかとなり、エチレン以外の要因の重要性も確認された。
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