研究概要 |
蚕の硬化病菌のプロトプラストの分離再生復帰および融合とパルスフィ-ド電気泳動による染色体DNAの分離法について検討した。蚕の硬化病菌をLーbroth液体培地で培養することにより若い菌糸を大量に得ることができた。プロトプラストの分離に用いる酵素はZymolyaseがどの菌においてもある程度有効であった。また,2ーメルカプトエタノ-ルによる前処理は全硬化病菌において効果が認められた。つぎに,赤きょう病菌についてプロトプラストの分離,復帰および融合について詳細に検討を加えた。本菌の分離にはZymolyaseとDriseraseが効果があり,それに用いる浸透圧調製剤はプロトプラスト分離時には0.7Mkcl,再生復帰時には0.7Mグルコ-スが最適であることが判明した。同条件下においてポリエチレングレコ-ル(PEG)法でプロトプラスト融合を試みた結果,PEG濃度40%,CaCl_2濃度10mMで15%の高い融合率をえた。融合株の14.0%がヘテロ2倍体であり,残りは組み換え体であると考えられた。ところで、プロトプラストは細胞融合あるいは形質転換に用いられるがその保存法に関する研究はほとんどない。そこで,プロトプラストをグリセロ-ル存在下で-80℃に保存した結果,プロトプラストの生存率は48日後で約60%であり,融合率の低下は認められなかった。したがって,プロトプラストの保存が可能になり,よりたやすくプロトプラストを用いる実験ができるようになった。 プロトプラストを寒天内で作製し,そこより染色体DNAを抽出し,パルスフィ-ルド電気泳動像より赤きょう病菌の染色体数の推定を行った。その結果,2Mbpー9Mbpの範囲で6本のバンドに分離し,赤きょう病菌の染色体数は6本以上で全ゲノムの長さは30Mbp以上と推定された。同様に黒きょう病菌を調べた結果,7本以上の染色体と32Mbp以上の全長が推定された。
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