研究概要 |
キチンとキトサンは植物病原菌の細胞壁を構築している多糖である。このキチン質を加水分解するキチナ-ゼやキトサナ-ゼ酵素がキチン質を構築成分としない一般高等植物に含まれることが解り、この植物キチナ-ゼ・キトサナ-ゼと植物病原菌の相互作用が注目されている。本研究は、植物病原菌に対するキトサン、酸性多糖やキチナ-ゼの生育抑制作用を調べ、病原菌の感染に対する植物細胞の新しい自己防護機作を細胞と分子レベルで解明するを目的とした。 アミノ基をもつキトサンオリゴ糖(d.s.2〜8)、低分子キトサン(mw3,000-5,000)、高分子キトサン(MW150,000)とプロタミン、また、カルボキシル基をもつペクチン酸とアルギン酸をそれぞれ10,100,1,000ppmを添加したポテトデキストロ-ス寒天培地に、ナシ黒斑病菌、イネイモチ病原菌など15種の植物病原菌の菌糸を接種し、培養した。一定期間に生育したコロニ-の直径から生育抑制を比較した。 植物病原菌生育抑制は、これら化合物の濃度に依存した。また、キトサンによる生育抑制菌数は高分子ほど多くなり、高分子キトサンン>定分子キトサン>キトサンオリゴ糖で重合度依存性を示した。プロタミンの1000ppm添加で15種のカビ生育が20-70%も抑制された。キトサンで阻害されないカビも見られた。ペクチン酸の1000ppm添加で8種のカビが10%以上の生育を抑制し、アルギン酸の1000ppm添加で7種のカビの生育が約10%以上抑制された。 これらの生育抑制の初期は、病原菌細胞壁とプロタミンやペクチン酸の高分子電解質複合体形成によると推定され、これらのイオン結合枝が多くなるほど生育抑制効果が増大すると思われる。ここに調べた15種の植物病原菌生育はプロタミンやキトサンで抑制され、これらの細胞壁に酸性基が比較的多いことを暗示する。
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