研究概要 |
polygodialなどの真菌細胞膜障害剤で軽度に処理された酵母においては、種々の抗生物質や阻害剤に対する感受性が高いと報告されている。本研究では酵母細胞膜の透過障壁に特異的に作用をおよぼし、併用した非透過性無効阻害剤の細胞膜透過を可能にし有効化させうる物質の検索を試みた。1.まず、検索研究に用いる試験酵母の調製を行った。すなわち、酵母Saccharomyces cerevisiae IFO 0203をNTGで突然変異処理し、(1)アルギニン透過酵素欠損株(アルギニンアナログcanavanineに対する非感受性株arg-p3)および(2)ウラシル透過酵素欠損株(ウラシルアナログ5-fluorouracilに対する非感受性株ura-p17)を調製した。また、(3)酵母Candida albicans IFO 1061はウラシル透過酵素欠損株であることを見出した。2.ついで、上記試験酵母(1)〜(3)に対し、canavanineあるいは5-fluorouracilとの共存下ではじめて抗酵母作用を示す物質を種々微生物の培養液を対象に検索した。その結果、土壌から分離した約3100種類の微生物のうち、4菌株(未同定糸状菌、Penicillium sp.,未同定放線菌およびStreptomyces sp.,)はそのような物質の生産菌として有望であるとみなした。3.それらの培養液より目的物質(細胞膜作用性物質)を単離し、それぞれchrysodin,anhydrofulvic acid,chaininおよびtetramycin Aと同定した。4.これらの物質と真菌類には効かない種々阻害剤とを併用したところ、いずれの細胞膜作用性物質もcanavanineや5-fluorouracilのみならず、いくつかの無効阻害剤をを数種の真菌類において有効化しうることを認めた。5.chrysodinは感受性酵母においてリノ-ル酸およびリノレン酸の生合成を阻害した。従って、これらの多価不飽和脂肪酸は細胞膜の透過障壁機能において重要な役割を果していると推察した。他の細胞膜作用性物質の作用機構については目下検討中である。
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