研究概要 |
ファイトアレキシン類の代表としてプレニル化イソフラボン類及び関連化合物を選び、Botrytis cinerea及びAspergillus fluvusによる解毒代謝の様式を究明した。研究成果は以下のように要約される。 (1)基質として、化学誘導した7-0-methyl-luteone(1)、7-0-methyl-2,3-dehydrokievitone(2)、Lupinus luteusから得たtopazolin(3)、Piscidia erythrina由来のpiscidone(4)その他の、二種のカビによる代謝反応を行った。その結果、フラボン骨格の3も両菌によりluteoneと同様の代謝を受けた。4の代謝実験により、プレニル基は6、8又は3'位に加えて、6'位でも環状エ-テルへの変換反応を受けることが判った。 (2)B.cinereaによる1の主代謝産物は2,2-dimethy1-3-hydroxy-2,3-dihydropyran構造を有し右旋性を示した。その立体化学はSと推定された。 (3)化合物2はA flavusによっては全く代謝されなかったが、B.cinereaにより速かに酸化され、プレニル二重結合がエポキシ化されたもの、その加水分解で生成したと考えられる側鎖部のグリコ-ル誘導体を与えた。グリコ-ルの不斉炭素はオスメ-トエステルのCD測定によりS配置と決定された。一方、エポキシドを立体保持で加水分解したら、代謝産物のグリコ-ルと立体化学を含めて同じものを与えたので、エポキシドの不斉中心もS配置と決定された。 本研究によって、カビによるプレニル側鎖の環状エ-テルやグリコ-ルへの変換反応の基質特異性及び変換反応の立体化学がより詳細に解明され、代謝反応の中間体としてエポキシドが存在することが証明された。また、ホワイトル-ピン(Lupinus albus)の構成イソフラボノイドを精査し、本植物中では、カビによるプレニル化イソフラボンの代謝と同様にプレニル基のエポキシ化中間体を経て生成したと予想させる部分構造を有する複合イソフラボン類が多数見出された。
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