研究概要 |
森林土壌潜在微生物の発現機構を明らかにする一環として,以下の実験・調査を行った。 森林土壌に尿素(800g/m^2)を施与すると,処理直後,土壌中の真菌,細菌(全細菌とクリスタルバイオレット耐制細菌),細胞性粘菌,ササラダニ類,線虫類,ヒメミミズ類の生存量(=バイオマス)が激減した。その後,処理区における真菌,細菌,クリスタルバイオレット耐性細菌,細胞性粘菌の生存量は,遷移前期のアンモニア菌の発生期頃に尿素無処理区(対照区)のこれらの土壌生物の生存生物の生存量より高い値を示した。一方,処理区のササラダニ類とフシトビムシ類の生存量は,遷移前期と後期のアンモニア菌の発生時に対応する時期,対照区での生存量より高い値を示した。 Amblyosporium botrytisは高pH,高NH_4ーN濃度,高含水率を,Ascobolus denudatusは高pHを,Coprinus phlyctidosporusは高NH_4ーN濃度を好み, Lyphyllum tylicolorと Hebeloma vinosophyllumは高NH_4N濃度耐性を示すことが判明した。 以上のこと及び,アンモニア菌の発生量,他の土壌生物の生存量,土壌条件の相関性を解析した結果より,アンモニア菌は,pHとアンモニア濃度の上昇によって既存の土壌生物の生存量が減少して,生態的な空隙ができた時に増殖を開始し,その後,高NH_4N濃度,高pH,高含水率条件に対する高い適応性によって,尿素処理土壌で旺盛な増殖を行う土壌潜在徴生物と推察した。
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