研究概要 |
野外調査によってナラタケの生態を観察すると共に,調査によって得られた,あるいは送付を受けた新鮮な子実体から単胞子分離,または組織分離の方法によって菌糸体培養株を作成した。これらを材料に日本に分布するナラタケ(広義)の分類について再検討した。北海道,四国,および琉球列島を除く各地から得られた61菌株について,単胞子分離菌糸体を用いて菌株間での交配試験を行った結果,6つの不和合性集団(A〜E,およびAM)が認められた。これらについて,それぞれの集団における子実体の形態学的特徴,生態学的特徴,および組織分離培養菌糸体のポテト・デキストロ-ス寒天培地(ニツスイPDA),および3%麦芽エキス寒天培地(ディフコMA)上における培養的性質(25C^。,30日間)について調査した結果,それぞれの集団は形態学的にも独立した集団であり,また,子実体の発生時期,環境などの生態学的特徴においても一定の傾向をもった集団であることが認められた。形態学的特徴としては,担子器の基部におけるクランプの有無を除いて顕微鏡的特徴よりも肉眼的特徴,特に子実体の〓表面における鱗片の発達程度,状態,形状などの特徴が不和合性集団間において顕著な差異として認められた。培養的性質(コロニ-形態,培地の着色,菌糸生育)は,AM集団を除き菌株間での変異が大きく,集団特有と思われる性質もいくつか認められたが,これらをもって集団全体の培養的性質を特徴づけることはできなかった。C集団を除き全国的に分布が認められたが,Aは主に西日本に,DおよびEはブナ・ミズナラ帯に分布する傾向が認められた。分類学的にこれらの不和合性集団を検討した結果,AMおよびCはそれぞれArmillaria mellea(Vah1:Fr.)Kumm.s.str.,A.ostoyae(Romag.)Herinkと同定された。BおよびEはそれぞれ新種,またAおよびDはそれぞれA.lutea Gillet?,A.cepistipes Velenovsky?と考えられた。
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