制振合金の一種で、熱処理温度を変えることによって対数減衰率を変化させることが出来る特徴を有するサイレンタロイ(12Cr-3Al-Fe、東芝製、略称SIA)から厚さ2mm、310mm四方の板を10枚作製した。減衰能を付与する前処理として、熱処理無し、熱処理温度500°C、600°C、800°C、1000°Cの5水準の処理を施した板を各2枚調整した。これらの板から直径305mm。鋸身厚さ2mm、歯数80、歯形が縦横兼用の交互歯であるチップソーを作製した。一方、チップソーの台金を切り取った端材から圧延方向とそれに45°の方向で巾10mm、長さ100mmの短冊を作製し、片持ち梁の端部を弾く方法でそれらのテストピースの対数減衰率を測定した。 得られた5種類のSIAの平均対数減衰率は低い方から0.93×10^<-2>、1.4×10^<-2>、6.9×10^<-2>、9.9×10^<-2>、10.4×10^<-2>となり、この順に作製したチップソーをH1、H2、H3、H4、H5と名付けた。参考までに、チップソーに広く用いられている合金工具鋼(SKS5)のそれは0.60×10^<-2>であった。 減衰能の異なる5種10枚のチップソーを丸鋸回転装置に装着し1000〜6000回転まで100回転ごとに回転させ、鋸軸延長上で鋸身中心から1mの点で騒音レベルとパワースペクトルを精密騒音計、FFTアナライザーで測定した。得られたデータをパーソナルコンピュータに入力し、解析した結果、H1やH2では所々で金属音が生じたが、H3からH5では全く金属音が生じず、SIA製チップソーの金属音の抑止には0.07以上の対数減衰率が必要であることが分かった。今後はこの値の普遍性を確かめるために、対数減衰率が0.07前後で鋸身の材質りつが異なるチップソーを作製し、金属音発生の有無を調べ、より安価で適した鋸身材料を探す必要がある。
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