断続光の嫌忌的効果を利用した"光の垣網"を作り魚群の行動を制御するための基礎的研究を行った。 短い周期で急激に明暗が変化する断続光は、魚群に対し著しい嫌忌的効果をおよぼしその行動を規制することはすでに明らかにした。 そこで、細く指向性の強い光束とした断続光を多数同時に照射可能な多光束照射装置を考案試作した。この断続光光束を等間隔で一列に並べて照射し、光の垣網とした。光の垣網は、直径7mの大型円形水槽内を側壁に沿った幅1.3mの環状型水路として仕切り、その一点を直角に横切るよう設置した。照射方法は、水面上より垂直下方向へむけた縦照射と、水槽壁側の水中より水平に水槽中心へむけた横照射とした。明暗周期、照度比および照射光の波長組成は既報にもとずく最も効率良いものに設定した。 この水路内に魚群を自由に遊泳させ、暗順応と明順応それぞれの状態において、遊泳方向の変換や通行の阻止のために必要な光の垣網の照度と最も効率の良い照射方法を行動学実験の方法で明らかにした。 光の垣網の効果の判定は、遊泳魚群の通行阻止率あるいは行動停止や方向転換の位置の変化および移動速度の低下率より定量的に解折した。 供試魚は走光性の強いマアジとし、人為的影響の少ない採捕したての魚を使用した。 その結果、光の垣網(縦照射)による魚群の行動制御は十分可能であると判断された。すなわち通行阻止効果は、暗順応状態では光の垣網と背景照度との明暗照度比が83:1以上、明順応状態では5060:1以上で発現した。また、照射方向等によりその効果は相違することも明らかになった。今後、光束の太さ、光束の間隔、有効範囲などを究明することにより漁具や漁法への幅広い応用が期待される。
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