研究概要 |
動物の単位体重当り代謝量(酸素消費量を指標とする)(M/W)は体重の増大に伴って低下するが、この現象を説明する新しい仮説(Itazawa and Oikawa,1983)を、先に淡水魚のコイを用いて検証した(Itazawa and Oikawa,1986)での本研究では海水魚のマダイを用いて検証することを目的とした。 昭和63年度は、定性的検証を計画した。腸,幽門垂、脳のように生命に必須の器官は、組織の代謝活性が高くその体重に占める重量比は成長に伴って低下した。一方普通筋を主とする躯幹部は生命への直接的重要性がやや低く、組織の代謝活性が低くその重量比は成長に伴って増大した。これらの結果を総合すると、単位体重当り代謝量は成長に伴って低下することになり、新仮説が定性的に妥当することが裏づけられた。 平成元年度は、定量的検証を計画した。主要部分のin vitroにおける酸素消費量の単位組織重量当りの値Qo_2(μl/min.g)は、Qo_2=CW^d…(1)式によって表わされた。また主要部分の重量P(g)は、P=kW^s…(2)式によって表わされた。各主要部全体としてのin vitroにおける酸素消費量m(μl/min)は、(1)式と(2)式を総合して、m=c.kw^<dts>…(3)式で表わされる。そして単位体重当りの体全体のin vitroにおける代謝量Min vitro/Wは、Min vitro/W=Σm/Σp…(4)式によって表わされる。(4)式によって計算したMin vitroは体重0.04-8.23gの範囲にわたって、1.97W^<-0.189>となった。一方生きているマダイの単位体重当り酸素消費量Min vitro/Wは、同じ体重範囲にわたって6.29W^<-0.178>となった。両者のベキ数はほぼ一致し、頭書の現象は成長に伴って、体謝活性の低い組織の体に占める重量比が増大し、また諸組織の代謝活性が低下することによって生ずるのではないかという上述の新しい仮説が、定量的にも裏づけられた。
|