研究概要 |
浮製サルモリジンのエゾスイワに対する50%致死量は筋肉内および腹腔内接種でそれぞれ196,556μg/kgであった。また,ニジマスに対する50%致死量は筋肉内接種で58μg/kgであった。サルモリジンは60℃,30分の加熱処理または0.4%ホルマリン処理後,1週間の静置でトキソイド化された。サルモリジントキソイドをエゾイワナに筋肉内接種後,3週間で凝集抗体価が最高となった。さらに,エゾイワナをサルモリジントキソイドで筋肉内接種あるいは浸漬免疫後,Aere mona salmonicidaで実験的感染したところ,免疫魚の生残率は非免疫魚のそれより高くなった。したがって,サルモリジントキソイドはせっそう病に対するワクチンとして有効であると考えられる。サルモリジン抗毒素はエゾイワナ抗血清から硫酸アンモニウム沈澱アンモニウム沈澱,DEAEーセルロ-スの陰イオン交換クロマトグラフィ-およびSepharose 6Bのゲル3過法によって精製された。酵素抗体法によってA sal monicidaの培養上清中および罹病魚の病巣組織中に雇生されるサルモリジン量を測定したところ,培養上清では培養後に12,24,36時間後にそれぞれ3.9,10.3,20.5μg/ml,接種菌量6.6×10AA7BB,6.6×10AA6BBcfu/mlの実験的感染魚の接種部筋肉でそれぞれ4.4〜37.5μg/g,85ng〜10.1μg/gであった。サケ料魚類(ニジマス,ギンザケ,ヤマメ,エゾイワナ,カワマス)の赤血球はサルモリジンによって特異的に溶解されたが,鳥類(ニワトリ,ガチョウ)および哺乳類(ウマ,ヒツジ,ウサギ,モルモット)の赤血球は溶解されなかった。なお,サルモリジンに対するサケ科魚類の赤血球の感受性は異なっており,サケ科魚類赤血球の表面構造が属レベルで相異していると考えられた。サルモリジンはフォスフォリパ-ゼC活性を示さず,チオ-ル化合物によって再活性化されなかった。また,サルモリジンの溶血活性はリン脂質によって影響されなかったが,アシアログリコフォリンによって促進された。
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