研究課題
一般研究(C)
本研究は、1984年度から実施している日本の稲作技術と経営に関する長期研究計画の一環をなすものである。これは、個別農家の質問票調査に基ずいて、技術と経営環境の変化に対する農家の経営対応の論理を明らかにすることを目指しており、本年度は佐賀県の高生産力地帯において実態調査を実施した。長期研究としてのデータの斉合性を維持するため、基本的にこれまでと同内容の質問票を用いて、世帯条件、農地保有と利用、機械と労働利用、栽培技術、経営費構造、経営志向などに関するデータを収集した。調査地として、佐賀県小城郡三日月町および神埼郡神埼町を選出し、前者で2つの集落、後者で1つの集落の農家〓皆調査を行った。しかし、兼業農家による調査協力がやや低調であり、回収した質問票は三日月町で19戸、神埼町で29戸の合計48戸にとどまった。農家の実態調査に加え、町役場、普及所、農協、県庁などで地域の概況調査をも実施した。2つの調査地は対照的な経営対応の事例として選出されたものである。三日月町では土地基盤整備事業を契機に形成された生産組織を軸に稲作生産力の発展が進められてきた。調査村においても生産組織が機能してきたが、集落内での農家分解が進み、農地は専業農家に集積されている。専業農家は一層の経営発展を期するため、現行の米麦プラス施設野菜に加え、周辺集落への進出を図る段階に至っている。一方、神埼町はこれまで個別の対応によって経営発展を進めてきたが、現在実施中の土地基盤整備事業を契機に生産組織化を図る動きが出ている。いずれの調査村も佐賀県の高生産力稲作を担ってきた地域であり、米麦プラス施設野菜が主たる経営組織である。異なる経営形態への志向と関連する技術構造の変化に関する比較分析は、今後の日本稲作の方向について有益な示唆を与えよう。来年度にデータの分析、成果のとりまとめを行う。
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