都市周辺部の開発とともにさまざまな問題が生じるが、なかでも水の状況の変化はわれわれの生活に多くの影響を及ぼす。排水問題の発生は流域の非計画的開発によって量的にも質的にも条件を越える排水が流入することから始まっている。濃尾平野での調査でも、都市化の進展と共に、年間実に多額の水路維持管理費を必要とし、多くの労力を費やしていることが示された。都市化の結果、土地改良区が図らずも負うことになった難題である。 都市化地域の排水管理において、(1)乱開発とも呼ぶべき状況下での排水問題に対するものと、(2)今後の新規開発に対するものとでは対処の仕方が異なる。しかし、いずれの場合も、水の流動に関する的確なモデルに基づいた、水と人間のシステムの全体動向を見通した「流域水計画」が必要であることを強調した。 このようなモデルとして、土地利用変化に対応して流出量の変化予測が可能なモデル、即ち、集水域のブロック分けと、土地条件変化後の有効雨量の推定ができるモデルが必要である。開発を進めてきた分布貯留型モデルはそのような条件を備えているため、代表集水区による流域特性の評価法を導入するなどさらに改良して、大小の流域に適用し、精度の高いモデルであることを実証した。また、評価の難しい流域面源負荷について定量的にとらえるために、重回帰モデルによる単位負荷の考え方を示し、流域水質の保全管理への適用について考察した。 水域の保全は、流域で活動する人々の理解と協力なしには実現しない。「都市化現象」は空間的には都市と農村の異質の文化の出会いであり、時間的にはその地の歴史の転換点とみることができる。そこでの一つの基底をなす要素が水であり、最近のハ-ドシステムだけでなく、新しい文化の形成につながる人間味のある水管理システムを造り上げていくための条件を示した。
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