研究概要 |
ブラジル産のカイマン(Caiman crocodilus yacare,Daudin、1802)3例から胃腸膵の各部位を摘出し,プアン液固定,パラフィン切片を免疫組織化学的に染色し,各種内分泌細胞の分布と出現頻度を検索した。 Fundic stomachでは中等度の腸グルカゴン細胞,少数のセロトニンおよびソマトスタチン細胞,極少数のモチリン細胞が認められ,幽門胃では多数のガストリン細胞と中等度のソマトスタチンおよびモチリン細胞が認められた。腸では全体を通してセロトニン,ソマトスタチン,腸グルカゴンおよびペプチドYY(PYY)細胞が認められ,主に前半部にはガストリン,トリ膵ペプチド(APP),ウシ膵ペプチド(BPP)およびPYY細胞が,主に後半部にはニチューロテンシン細胞が夫々認められた。膵臓ではインシュリン,グルカゴン,ソマトスタチン,APP,BPP,PYYおよびモチリン細胞が内分泌部および外分泌部に認められた。 以上の成績をワニ科アリゲーター亜科に分類されているミシシッピーワニ(Buchan et al.,1982,1983,1987)と著者らが明らかにしたハシビロカイマン(Yamada et al.,1986,1987)の成績と比較すると,今回のカイマンはボンベシンとモチリン細胞が認められ細胞が認められた点でハシビロカイマンに近く、セクレチンおよびCCK細胞が認められなかった点ではミシシッピーワニに似ていた。故に、系統発生学的に同じ亜科に分類されているこれら三種のワニの消化管内分泌細胞の出現と分布は同一でなく,消化管内分泌細胞の観点からは今回検索したカイマンは前記二種のワニの中間に位置することが明らかになった。 ハシビロカイマンで初めて報告されたモチリン細胞の膵臓と幽門胃での出現(Yamda et al.,1986,1987)は,今回の検索でも確認され,この所見がハンビロカイマンだけの例外的なものではなく,カイマンに分類されているワニに特徴的な所見である可能性が強く示唆された。
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