研究概要 |
野外で発生している豚の糸球体腎炎、とりわけ管内増殖性糸球体腎炎(EPGN)の発生状況および病理学的本態について研究した。また、豚由来β溶連菌を健康子豚の扁桃に接種し、EPGNの実験的再現を試みた。 1.発生状況 O日齢から6ヶ月齢以上の豚2129例の腎臓を検索したところ、EPGNは約6ヶ月齢の肉用豚16例(検索全例の0.8%、6カ月齢豚の1.3%)に認められた。また、メサンギウム増殖性糸球体腎炎(MDGN)が572例(検索全例の26.8%)に、1gA腎炎が28例(検索全例の1.3%)に認められ、これらの糸球体病変は全年齢群にわたって出現していたが、経齢とともに出現頻度が増加した。 2.病理像 EPGNは糸球体毛細管における管内性細胞増殖を特徴とし、免疫組織学的には、1gG、1gMおよびC_3の顆粒状沈着がメサンギウム域および係蹄壁に認められた。MPGNではメサンギウム基質の増加が著明であった。1gG、1gM、1gAおよびC_3の沈着は認められず、本糸球体病変の発生に免疫学的機序が関与している可能性は低いと思われた。1gA腎炎ではEPGNとMPGNの糸球体病変が同一系球体に共存していたが、1gAの特異的沈着を伴っており、EPGNとMPGNの移行像ではなく、独立した糸球体疾患と考えられた。 3.実験的再現 離乳直後の雑種豚2頭の扁桃内に、β溶連菌(血清型B,C,E,N,P,R,U)を1日1回6週間にわたって接種し、EPGNの実験的再現を試みた。組織学的、超微形態学的および免疫病理学的手法による検索を試みたが、EPGNの作出は不成功に終わった。
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