研究概要 |
1.健常牛の肝LDHアイソザイムはLDH1 31.7%,LDH2 24.8%,LDH3 27.3%,LDH4 12.8%,LDH5 3,3%であった。水腫性変性を伴う肝病変では健常牛よりLDH1,2が増加した。脂肪肝ではLDH1の減少とLDH2の増加がみられた。欝血肝ではLDH1の減少とLDH3,4,5の増加が、また壊死性病変ではLDH1,2の減少とLDH3,4,5の増加が認められた。これらの病群間でLDHの各分画を変数にして判別分析を実施したところ、正判別率は欝血肝群と脂肪肝群とで72%、欝血肝群と壊死群で79%であった以外は、各病郡間で80%以上であり、良好に判別された。肝細胞の酸素欠乏による機能障害はLDHアイソザイムパタ-ンを変化させる要因であると推察された。 2.ICRマウス、ウィスタ-ラット、モルモット、ゴ-ルデンハムスタ-の肝、膵、胃、小腸、心、大腿二頭筋、子宮、腎皮質、脾、リンパ節、脊髄および赤血球中のLDHとCPKアイソザイムを、組織電気泳動法にて分析した。マウス、モルモット、ハムスタ-ではLDHは5本、ラットでは4本のアイソザイムバンドを認めた。CPKは各動物とも3本のアイソザイムバンドを認めた。ハムスタ-ではMMバンドはさらに2つの亜分画に分離した。本分析は近交系の遺伝学的、系統発生学的分類に応用できるものと考えられた。 3.牛に実験的腎実質病変を作出すると、尿および腎皮質、髄質ともLDHアイソザイムは対照と比べてM型サブユニットの活性上昇が著明であり、腎病変により尿LDHアイソザイムパタ-ンは直接影響されることが示唆された。臨床例でも高度の腎症や腎結石症などで尿LDHと強く相関するパタ-ンが得られた。 4.馬の限局性筋萎縮症の病変部位の筋LDHアイソザイムはLDH5が90%を占めた。筋LDHの嫌気的代謝活性の強さは筋病変部>対側健常筋>健常馬の同一部位であり、筋萎縮部位の酸素欠乏が示唆された。
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