研究概要 |
食品中の病原微生物のコントロ-ルとして、食中毒原性毒素(ブドウ球菌エンテロトキシンおよびセレウス菌下痢原性毒素)に対するモノクロ-ナル抗体(MAb)を作製し、その性状(反応性、親和性等)を調べ、さらにMAbを用いる毒素の精製法および毒素の検出法について検討した。得られた結果は以下の通りである。 1.ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)に対しMAbs13種(SEAのみに反応するもの2種;SEE,1種;SEAとSEEの両方,3種;SED,5種;SEA,SEDおよびSEE,1種)を作製した。MAb AE-53(SEAとSEEに反応)をAffi-gel10に吸着させ、カラムに充填し、イムノアフィニティ-クロマトグラフィ-(Immunoaffinity chromatography)により、SEAとSEEを1ステップの簡易操作により精製できた。本方法による毒素の回収は、70-75%と高率であった。また、SEDについても同様に、毒素への親和性の最も高いMAb KD-1を用いてSEDを高率(77%)に精製できた。他方、SEAの検出法としては、MAb A-111(20μg/ml)を吸着させたポリスチレンプレ-トに、毒素を添加、反応させた後、標識抗体(MAb A-211にペルオキシダ-ゼを吸着)を添加し、基質を反応させて行うELISA法により、毒素1ng/mlを特異的に検出することができた。本方法は、食中毒の診断および食品中の毒素検出に有効であると推察される。 セレウス菌下痢毒素に対するMAb3種を作製し、これを用いる毒素精製法について検討した。MAbによって、毒素の吸着量は大きく異なる(1.3-70%)ことがわかった。たまイムノアフィニティ-クロマトグラフィ-による毒素の溶出緩衝液としては、6M Guanidine-HCl pH7.2が高い毒素の回収(回収率は16-32%)を示した。本精製法は毒素の回収は25-30%と、従来の物理化学的方法(6-8%)に比べ高率であった。本方法は、毒素の診断に必須の抗毒素血清を作製する為の、抗原(毒素)を容易に作製するのに有効であると考える。
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