研究概要 |
初年度はマウスの胚内体腔とくに腹膜腔自由細胞を観察し,2年度は腹腔マクロファ-ジの起源を検討することを目的として,胎生期を遡り,胚外体腔,肝臓および卵黄嚢を主として準超薄片で光学レベルで観察した。 1.胚内体腔自由細胞 胎生期の腹膜腔には食胞を含む成熟マクロファ-ジなどの単核自由細胞が認められ,胎生後期にはこれに肥満細胞が加わる。胎生18日の腹膜腔の細胞構成は自由細胞の79.5%はマクロファ-ジ単球系細胞であり,20.5%が肥満細胞である。成熟動物の腹膜腔に見られる好中球やリンパ球は胎生期には認められない。肥満細胞が出現する以前の胎生15日より若い胎児では腹膜自由細胞は単核食採細胞系(MPS)で占められる。胎生11-13日の腹膜腔遊走細胞は大多数が細胞直径で9ー1μmの球形細胞で,核胞体比は0.7以下が多い。細胞表面からは多数の長い細胞質突起が見られ,胞体には食胞や多数の液胞が含まれ,成熟マクロファ-ジの形態の細胞が少なくない。 2.胚外体腔単核自由細胞 胎生11日以前では腹膜腔は胚外体腔に開き,胚内胚外の両体腔は連続している。胚外体腔には胎生10日から単核自由細胞が認められる。この単核細胞は腎臓形の核と細胞表面に多数の長い細胞質突起を有し,液胞を含むが,大型食胞は欠いている。このような単核細胞は最も早期では胎生9日の胚外体腔から認められる。これとよく似た形態の単核細胞は胎生9日の卵黄嚢の単核細胞には胚外体腔に比べるとやや小型で,核胞体比がより高い細胞も多く含まれる。この単核細胞が胎児腹膜腔の成熟マクロファ-ジの形態学レベルで認識できる最も早期の前駆細胞とみなされる。
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