研究課題/領域番号 |
63570057
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
神経・筋肉生理学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
有働 正夫 大阪大学, 健康体育部, 教授 (60009983)
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研究期間 (年度) |
1988
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研究課題ステータス |
完了 (1988年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1988年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 大脳基底核 / 歩行 / 回転運動 / イボテン酸 / 破壊後代償 / 黒質網様部 / 線条体・黒質シナプス |
研究概要 |
大脳基底核(黒質)と運動制御との関係については、従来、黒質緻密部から線条体へ上行する系が詳しく研究されてきた。しかし最近では、線条体ーー黒質網様部ーー上丘・脳幹網様体ーー頚筋・背筋の下行系と運動制御との関係も注目されている。その主たる理由は、一側の黒質網様部ニューロンを破壊または機能停止させたときに、著明な姿勢異常・歩行異常(破壊対側への頚・胴体の屈曲及び回転運動)が生ずることである。この障害は、従来、黒質緻密部を破壊したときにみられていた症状とは全く異なるので、黒質網様部の運動制御を浮彫りにする上で重要であると考えられ、さらに、破壊後の代償過程も明確に認められるので、可塑性の研究対象としても興味深い。 本研究では、黒質網様部にイボテン酸を注入して、一部のニューロンを破壊後、姿勢異常・歩行異常が生じ、それらが2ー3日後に消退するので、この代償過程と、黒質網様部より下行する上記の系との関係をしらべた。イボテン酸注入後5ー14日のネコで姿勢・歩行が正常化したことを運動解析により確認し、ネンブタール麻酔して、破壊側及び対側に残存する黒質網様部ニューロン(記録と同側の上丘またはその近傍に軸索を下しているものに限る)の単一放電を記録し、記録と同側の線条体(尾状核)に単発の電気刺激を与えた。その結果、尾状核・黒質網様部シナプス伝達のうち、興奮性シナプス伝達は破壊側の方が強く、抑制性シナプス伝達は破壊側の方が弱いことが判明した。黒質網様部ニューロンは抑制性であることがわかっているので、以上の結果から、尾状核・黒質網様部シナプス伝達に、黒質網様部の一側性破壊後の姿勢異常・歩行異常を代償する方向の可塑的変化が生じていることが考えられる。この可塑的変化が生ずる事実は、黒質網様部から頚筋・背筋に至る上記の系が、定位歩行において機能していることを示唆すると考えられる。
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