研究概要 |
研究代表者は当該研究課題を遂行中、昭和63年4月1日付で、杏林大学より東京医科大学ヘ転任することになり、当該研究をやむお得ず中断した。そこで昭和62年度より継続研究であり、ほぼ結論の出ていた垂直半規管入力を受ける前庭核細胞の生理学的性質について東京医科大学に実験室が出来るまで協同研究者の井須尚紀主任研究員(航空宇宙研究所)の実験室で研究を続けた。 1.後半規管系興奮性前庭核細胞の軸索投射様式についての研究 この前庭2次ニューロンは、脳幹で交叉し、上行枝を持ち、対側動眼神経核へ投射する(c-VO)群、上行・下行枝をもち対側動眼・頸部屈筋両運動核へ投射する(c-VOC)群、下行枝をもち頸部屈筋運動核へ投射する(c-VC)群の3群に分れた。c-VO群は内側核、c-VOCとc-VC両群は下核に存在した。一方脳幹で交叉せず同側(i-)性支配の細胞は全て上行枝をもたずi-VCニューロンであった。この細胞は外側腹側に限局していた。Isu,Uchino,et.al.,Exp.Brain Res.Vol 70,1988(181ー192)。 2.前半規管系興奮性前庭核細胞の軸索投射様式についての研究 この前庭2次ニューロンは、前述した後半規管系前庭核ニューロンと同様、交叉性、非交叉性の2群に分れる。交叉性はc-VOと、c-VOCの2群に分れた。c-VOは内側核と上核に存在し、内側核群は内側縦束を、上核群は深部網様体を上行し同眼神経核へ投射した。c-VOCは下核に多かった。非交叉性細胞はi-VCのみで外側核に多かった。今まで述べた後・前半規管系興奮性c-VC,c-VOC,i-VC細胞は標的頸筋運動細胞の細胞体あるいは細胞体に近い樹状突起にシナプス結合していた。Uchino,et.al.,Exp.Brain Res.Vol 71,1988(345ー352)。 この2研究で、眼球・頭頸部の協調運動に前庭核ニューロンの内、特にVOCニューロンが直接的に重要であることがうきぼりになった。
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