研究概要 |
我々はラット肝可溶性画分に,アデニレ-トシクラ-ゼのβ-アドレナリン性応答を促進する因子を見いだしその構造および作用機序について検討している。この因子は分子量3,000のペプチドとGTPの複合体であり,高塩濃度下で二成分に解離する。この解離したGTP結合性ペプチドを用いた解析より,本ペプチドはGTPと結合することにより,アデニレ-トシクラ-ゼ活哉化機構におけるGTPの効果を増幅することが示唆された。これら知見に基づき,更に本ペプチドの機能的,構造的解析を行った。 1.機能的解析:(1)Sephadex Gー15を用いて,本ペプチド・GTP複合体と遊離 GTPの明確な分離パタ-ンを得た。この複合体を解離させSephadex Gー25 カラムクロマトグラフィ-により分画後,[^<35>S]GTPγSを用いたフィルタ-測定法により各分画のGTP結合能を測定した。上記GTP効果の増幅能を有する分画に一致してGTP結合能のピ-クが検出された。以上により本ペプチドとGTPの複合体形成,解離,再会合が直接的に証明された。(2)分離ペプチドのGTP効果増幅作用は,β-アドレナリン性応答に選択的に見られた。(3)[^<35>S]GTPγSを用いたフィルタ-測定法により,本ペプチドは GTP〉〉ATP〉UTPの順にに高い親和性をもって結合し,CTPとGDPには全く結合しなかった。この結果は,本ペプチドが他のG蛋白質とは異なる様式によりGTPと結合することを示唆する。 2,構造的解析:(1)分離ペプチドを逆相(C_<18>)HPLCにより精製し,単ーピ-クを得た。(2)これを最終精製標品として気相プロティンシ-クエンサ-によるアミノ酸一次構造の解析を試みた。N末端アミノ酸のプロックが存在することが示唆されたため,本ペプチドをトリプシンおよびエンドプロティナ-ゼ処理後,得られたフラグメントのアミノ酸配列の決定を行っている。構造の一部が明らかになったが更に検討中である。
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