研究概要 |
本年度は申請の最終年度に当たるが、昨年度に引き続いて順調に実験を行い、申請課題について、年期の目標をほぼ完全に達成することが出来た。本年度に得られた結果は以下のごとくである。 1.ラットグロビン遺伝子群の単離と構造解析: (1)全長30kbをcoverするoverlapping clone上に4個のembryo 型βグロビン遺伝子座を確認し、そのすべてについてfianking regionを含む全塩基配列を決定した。また各々の相対位置を確定した。このうち5'上流の3個(ε1,ε2,ε3)はpromoterおよび全転写領域にわたって完全な構造を有し、一方下流の1個(ψβp)はcodon66の位置に25bpの欠失を有する偽遺伝子と考えられた。 (2)全長60kbをcoverするoverlapping clone上に見いだした合計7個のadult型βグロビン遺転子座のすべてについて、flanking regionを含む全塩基配列を決定すると共に、その相対位置を確定した。これらは1個の偽遺伝子(ψβr)を除いて、いずれも発現に充分な遺伝構造を有し、先に蛋白質レベルで同定されているOβ,IIβ,IIIβーグロビンにそれぞれ対応する配列を有することが確かめられた。 2.ラットembryo型ヘモグロビンの構造解析とヘモグロビン転換: (1)胎生期ラット血液より4種のembryo型ヘモグロビンを単離し、3種の構成グロビン鎖(ζ,E1,E3)の全一次構造を決定した。このうち、ζ鎖は今回初めてその存在が明らかになり、またE1,E3 鎖はそれぞれ上記のε1およびε2遺伝子の塩基配列と一致し、両遺伝子が胎生期に実際に発現していることが明示された。 (2)胎生各期におけるグロビン鎖の同定から、embryo→adult型へのヘモグロビン転換の過程を明らかにした。 3.以上により、従来の結果と併せて、ラットにみられるヘモグロビンの多様性に関し、embryo型を含む構成グロビン鎖の一次構造と、これをコ-ドするグロビン遺伝子群の構成のほぼ全容を解明するに至った。
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