研究概要 |
NZB/W,MRL/Lpr,SL/Niなどの系統的自己免疫疾患マウスにしばしば唾液腺炎、腎血管炎などの臓器局在性自己免疫疾患が随伴することはよく知られている。老化に伴う免疫異常がある種の臓器局在性自己免疫疾患の発症に関与している可能性を明らかにすることを目的とし、加齢の進行したC57BL/6マウスの全身諸臓器を詳細に検索した。 [材料と方法]老人研飼育老化マウスC57BL/BNCrjを使用。月齢3ヶ月・24ヶ月までの雌雄126匹につき、通常の光顕的観察の他、凍結切片を用いた免疫組織化学的観察(ABC法)を実施した浸潤細胞亜群の解析を行った。また、老化マウスに於ける血中自己抗体の検出を間接螢光抗体法にて実施した。 [結果]老化マウスに多臓器に及ぶ自己免疫性病変の発症が認められた。即ち、雌雄マウスとも唾液腺炎、腎血管周囲炎、膵ラ氏島炎、肺血管周囲炎、肝内胆管炎の自然発症をみた。巣状リンパ球浸潤(臓器炎)は12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月と加齢の進行とともに頻度、程度とも増強する傾向がみられた。 免疫組織化学的に臓器浸潤細胞の表現型を解析した結果、Thy-1.2陽性T細胞が主体で(80%)、その亜群としてはL3T4陽性リンパ球が優位(70%)でLyt-2陽性リンパ球は10%前後であった。またlgs陽性細胞は4%-9%に過ぎなかった。老化マウス血中の自己抗体を間接螢光抗体法にて検索した結果、老化マウスに高頻度に検出された。その局在は、唾液腺導管上皮、腎尿細管上皮・基底膜、膵ラ氏島細胞、肺細気管支上皮、肝細胆管上皮であった。 [考察]老化の進行したC57BL/6マウスに高頻度に多臓器にわたる自己免疫性病変化の自然発症をみたとこは、ある種の臓器局在性自己免疫疾患は老化に伴う免疫異常を基盤にして発症する可能性が示唆された。
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