研究課題/領域番号 |
63570186
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
寄生虫学
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研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
遠藤 卓郎 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 室長 (90072959)
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研究分担者 |
川中 正憲 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 室長 (50109964)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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研究課題ステータス |
完了 (1990年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1990年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1989年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
1988年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | Toxoplasma gondii / 栄養型虫体 / メチオニン吸収 / イオン環境 / プロトンの電気代学的勾配 / アイソト-プ標識 / トキソプラズマ原虫 / アミノ酸の取り込み / メチオニン / pH / アミノ酸吸収 / カリウムイオン / ナトリウムイオン / 細胞内pH / 塩素イオン / 硫酸塩 |
研究概要 |
本研究はトキソプラズマ原虫のin vitroにおける蛋白合成の可能性について検討したものである。従来、本原虫の分裂増殖に関わる代謝は宿主細胞内でのみ活性化されるものと考えられ、宿主細胞外の実験系では観察できなかった。本研究によってトキソプラズマに特有な種々の生理活性は原虫を取り巻くイオン環境により制御されているものと解釈され、以下のことが明らかとなった。a)本原虫の運動性は原虫の膜を介して付与された電気化学的なH^+の勾配(およそ-35mV程度)により誘導されること。この場合、電気的(膜電位:△ψ)あるいは科学的なH^+の勾配(pH差:△pH)の何れによっても誘導された。b)宿主細胞へは原虫自らの運動によって侵入すること、c)細胞内pHを弱アルカリ性に保ち、H^+の勾配を極小にした状態に原虫を保存すると宿主細胞への感染性を長時間維持させることができること、d)トキソプラズマではグルコ-スを取り込みに連動して細胞内pHの低下が起こること、e)本原虫ははエネルギ-依存的に△ψを形成していること、f)メチオニン(^<35>SーMethionine)の取り込みはH^+の電気勾配に依存しており、効率的な取り込みを保証するためには△pHを極小に保つ必要があることg)メチオニン含有蛋白の合成はメチオニンが取り込まれると速やかに進行するが、合成は特に外液のイオン環境に左右されないこと、等々である。外部のイオン環境として重要な働きを担っているイオンはK^+とCl^-イオンと考えられた。K^+イオンはもっぱら原虫の細胞内pHの調節に必須の要素で、原虫の膜にK^+/H^+の電気的に中性な交換チャンネルが存在しているものと予想された。一方、Cl^-イオンは自然界において原虫に電気的なH^+の勾配(膜電位)を形成させるのに関わるものと考えられる。これらの結果より、h)トキソプラズマ原虫のアイソト-プ標識(pulseーlabelling)が容易となり、その応用として標識後の蛋白トレ-サ-実験が可能となった。i)現在までに宿主細胞への侵入過程において消費される(利用される)分子量およそ58.2および28.7kDaの蛋白を検出している。また、本研究により得られたイオン環境に関する知識はその応用的価値が広いものと考えている。上述のアイソト-プ標識蛋白によるトレ-サ-実験やアミノ酸の輸送に関する機構の解析は言うに及ばず、抗トキソプラズマ作用を持つ新薬の開発には強力な武器となるものと考えている。
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