研究概要 |
1.特異なVP4を有する新たなヒトロタウルス(HRV)群(K8株,0264株,0265株,M318株,M319株):1977年の冬期,北海道K市の一地域で発生したHRV感染による急性〓吐下痢症の集団発生例は、患者のほぼ80%が6才以上の学童・生徒・成人で,その起因ウイスルの強い伝播力と病原性が示唆された。本流行時に12才の患児糞便から分離培養されたK8株は,各種抗VP6,VP7単クロ-ン抗体(MAb)との反応性から,通常の血清型1ー亜群IIと決定された。一方1987〜1988年のHRVのサ-ベ-ランスで大阪市と松山市で分離された4株(0264,0265,M318,M319)のHRVsは血清型3ー亜群I+IIと同定された。3地域で分離されたこれら5株のHRVは以下の点で通常のHRVとは異なることが本研究で明らかにされた。(1)亜群IIに特異的な抗VP2MAbとの反応性を欠いている。(2)種々の抗VP4MAbとの反応性が通常のHRVと著しく異なる。(3)PAGEパタ-ン上,RNA分節5ー6間,10ー11間が通常のHRVのそれより大きい。(4)RNAーRNAハイブリダイゼ-ションの結果,これら5株は,遺伝子構成上HRVが属する2群(Waーfamily,DSー1family)のいずれにも属さない新たな群(family)を構成すると考えられた。(5)増殖性および病原性に関与するとされるVP4遺伝子の全塩基配列をK8株について決定した結果,通常のHRVと異なり,これら5株のVP4はA群HRVの4と著しく異る新しいタイプであることが示された。 2.増殖能および病原性の異る2種のサルロタウイルス(SA11)株クロ-ン:SA11株からMA104細胞で純化した大きなプラ-クを形成する株と小プラ-クを形成する株について,増殖能とマウスへの病原性を検討すると共にVP4遺伝子の全塩基配列を決定した。大プラ-ク形成株はより高い増殖性と強い病原性を示した。両株間では,7塩基で差違が認められ,5アミノ酸が置換していた。
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