研究概要 |
1.人死体の血液その他諸臓器を2様にとり、一方に10%glucose、他方に水を入れ、室温に放置したところ、20℃以上1日以上でethanol産生が明らかになり、glucose添加の方が著明であった。glucoseと腐敗組織を加えると、20℃、1日で約0.75%の産生があった。 2.ethanol産生における腐敗菌と酵母の比較 血液のみで7日まで0.1%以下、腐敗細菌添加では2日後0.3〜0.4%、酵母添加では1日で0.27%、こうじ添加では始めから4.45%、7日では約2.5%に達した。ラットの胃内に酵母の水溶液を投与後死亡させると、1日で胃内容0.6〜1.47%、腹腔液は0.14〜0.6%となった。 3.血液・肝homogenateを37℃のふらん器に放置し、添加物を加えてethanol産生を検討した。まず抗生物質を加えるとethanol産生はなかった。 4.同様な方法で、ADH,NADHを加えると生産ethanolはやや増強した。pyruvic acidを加えると、1日では対照より弱く、5日では5.4%の高値を示した。 5.酵母阻害物質すなわちADHに対するpyrazole、ALDHに対するcyanamideを加えると、完全にethanol産生は抑止された。 まとめ:死体の胃腸では酵母および腐敗菌により、他の部位では腐敗菌によりethanol産生が起りうるが、酵母では産生が強く、n-propanolの産生は弱い・死体や保存臓器におけるethanol産生のメカニズムは、糖質を材料とし、増殖する細菌のもつADH,ALDHなどの酵素により、生体におけるethanol代謝と逆の経路で起きるものと考えられる。
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