ABO式血液型物質は、赤血球膜において糖脂質および糖タンパク質として存在するが、どちらの型物質がより大きく血液型の反応に寄与しているかは未だ意見の一致をみていない。型活性を表わす糖脂質分子は糖鎖とセラミドから成り、糖鎖の長短あるいは複雑さの異なる数種類のvariantsから成る。A型活性糖脂質は既に4種類が単離同定されている。同様にB型糖脂質については5種類が同定されている。一方モノクロ-ナル抗体の普及は免疫学的検査に大きな進展をもたらし定性反応にとどまらず定量的検査にも広く利用されている。そこで本研究の開始に先だって抗ヒト血液型抗体の作製を行ない、約8000倍の凝集素価を有するIgM抗体を得た。A型、B型およびAB型の赤血球から膜を調製し有機溶媒抽出によって糖脂質を分画した。これを薄層クロマトで分離し、薄層プレ-ト上で抗Aおよび抗Bモノクロ-ナル抗体を用いてTLC Immunostainingを行なうことによって型物質を検出した。検出されたbandのうちで真の型物質かどうかをELISAおよび解離試験で確認した。確認されたbandについてクロマトスキャナ-を用いて染色強度を測定し、相対的比率を算出した。これらの値を検定するためにELISA法を用いて測定した所、両者の測定結果はよく一致していた。 以上のことから次の結論が得られた。A型およびB型糖脂質ともに、薄層クロマト上で速い移動度を示す直鎖状の短い糖鎖を有する型物質がより高い比率で存在する。枝分かれ構造を持つ長い糖鎖を有する糖脂質はその複雑さとともに比率が低下した。4種類のA型物質について、A型およびAB型の赤血球間で比較すると差はなくほぼ同じ比率を示した。一方、B型物質については6種類の活性糖脂質が確認され、B型およびAB型赤血球との間には、A型糖脂質の場合と同様にほとんど差はなくよく類似した分布を示すことが判明した。
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