研究概要 |
腫瘍壊死因子(TNF)は当初その抗腫瘍効果に注目されたサイトカインの一種であるが、その後抗マラリア作用,カヘクチン(cachectin)との類以性,エンドトキシンショックとの関連等について、生体内における意義の多様性について未知な部分が多い。われわれは6種類のヒト遺伝子組換え型TNFに対するマウスモノクロナ-ル抗体を作製し、種々の実験に用いた。これらをATー1,ATー2,ATー3,ATー4,ATー5,ATー6と命名した。ATー1,ATー2とATー3は2×10^3u/mlのTNFの活性を,5〜500μg/mlの範囲で中和した。一方,ATー4,ATー5,ATー6は活性を中和できなかったこれらすべての抗体は0.5〜500μg/mlの濃度の間で2×10^3u/mlのTNFに対して免疫沈降活性を示した。これらの抗体の特異性をTNF,リンホトキシン(LT),インタ-フェロン(IFN)の活性に対する中和能と免疫沈降活性でみると,中和能では,LT,IFNに対しては認められなかった。沈降活性はすべての抗体でINFに対しては認められなかったがLTに対してはATー1,ATー2,ATー4,ATー5について約50%に認められた。これはTNFとLTの間の構造のhomologyによると考えられた。中和抗体をエンドトキシンショックのモデルに応用し,致死的な効果をブロックすることがわかった。ニワトリ赤血球を抗原としマウスに投与するとT細胞を介して細胞障害活性をTNFが増強することがわかった。この増強は抗TNF抗体で消失した。癌患者単球のサイトトキシン活性を検討した。正常人コントロ-ルのサイトトキシン活性は抗TNF抗体によって完全に消失したが,癌患者の活性は20〜40%残存した。このことは,TNF以外に癌患者の単球は細胞障害活性を示すサイトカインを産生していることを示している。TNFの測定系についてBioassayのほか,ELISA及びradioimmunassay法を確立した。
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