研究概要 |
胆汁酸は極めて閉鎖的な腸肝循環を行っている。胆汁中より腸管へ排泄された胆汁酸は空腸から回腸までの広汎な部位より再吸収される。更に肝細胞では効率よく摂取される。腸管内においては嫌気性菌により胆汁酸脱抱合,7α-脱水酸化が行われ,遊離型胆汁酸(F),2次胆汁酸の生成が起こる。これらの事象を利用し,血液生科学的に腸管内諸種病態の診断を試みた。即ち経口胆汁酸負荷試験を行い腸管からの吸収動態を知り,血清胆汁酸分画測定により腸内細菌過剰増殖を診断することを目的とした。また両方法を併用し,「吸収不良」「腸内細菌過剰増殖」の両病態の鑑別を試みた。[方法]UDCA300mg経口負荷時の血清総胆汁酸は酵素蛍光法,血清胆汁酸分画は高速液クロにて測定した。[成績]:(1)腸疾患16例中10例において負荷後30,60,120分後の前値に対するUDCA増加量は有意に低下していた。外因性UDCAの吸収障害が推測された。(2)胆汁酸負荷試験とシリング試験はr=0.46と相関を認めた。(3)諸種胃腸疾患52例中23例にFの増加を認めた。その内1例においては嫌気性菌過剰発育を認め,手術時採取し得た2例の腸液では,血中と同様にFの増加を認めた。(4)Fの増加を認めた2例に抗生剤投与した所,血中Fの低下を認め,血中総蛋白値の改善を認めた。(5)分画測定と負荷試験を20例の腸疾患に施行した。その結果I型:分画異常群(F,DC増加:細菌過剰増殖),II型:負荷試験異常(吸収不良),III型:分画,負荷試験共に異常群,IV型:正常群の4群に分類できた。 [総括]胆汁酸負荷試験は吸収不良の病態診断に,血清胆汁酸分画測定は腸内細菌過剰増殖の病態診断に有用と考えられた。また両者を併用することで両病態の鑑別が可能になると考えられた。
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