研究概要 |
気管支喘息の発症には気道平滑筋と迷走神経が重要な役割を担っていると考えられる。そこで今回、ヒト気管支を用いてその膜・収縮特性を、モルモット気管を用いて迷走神経-効果器伝達に及ぼす内因性神経ペプチドの役割を、ヒト・イヌ・モルモットを用いて迷走神経-効果器伝達に及ぼす抗喘息薬の効果を検討した。(結果)(1)摘出ヒト気管支平滑筋では、90%以上の標本でbasal toneの変動と70%以上でphasicな収縮が観察された。静止電位は-40から-50mVで、90%以上の細胞でoscilation様の徐波が観察された。この徐波、pasicな収縮、basal toneの変動はFPL55712,atropine,AA861(5-1ipoxygenase inhibitor)で抑制された。AA861存在下では、leu Kotriene C_4,physostigmineによってphasicな収縮が出現したが、[K]_0を増加させても出現しなかった。電気刺激により興奮性接合部電位(e.j.p.)が出現し、これに引続き徐波が観察されたが、FPL55712はこのe.j.p.後の徐波を完全に消失させ、physostigmineはe.j.p.と徐波を増強させた。これらの結果より、平滑筋細胞膜の電気的活動が平滑筋の自発収縮に関与していると考えられた。また、迷走神経-効果器伝達に対し、prostaglandin E_2とβ_2-刺激剤は抑制的に作用していると考えられた。(2)substance P(SP)は気道平滑筋に対し直接の収縮作用とともに、迷走神経末端からのacetylcoline(ACh)放出を促進する作用を有することが示された。また、閾値下濃度のcapsaicinは、SPと同様に迷走神経刺激による収縮を増強させたが、AChに対する反応は変えなかった。また、enkephalinase阻害剤であるphosphoramidonも迷走神経刺激による収縮を増強させた。capsaicinおよびphosphoramidon投与によりSPと同様の反応が引き起こされたことより、内因性の神経ペプチドも迷走神経末端からのACh放出促進因子として作用している可能性が示唆される。(3)抗喘息薬であるprocaterd, azelastineは迷走神経-効果器伝達を抑制した。
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