研究概要 |
昭和63年度に行なわれた「健康人167名におけるパタ-ンリバ-サル大脳誘発電位(transient型)の正常波形ー潜時・振幅と年齢,頭囲,身長,性ー」に関する研究に引きつづき,平成元・2年度では「健康人114名におけるパタ-ンリバ-サルERG・VEP同時記録」と「多発性硬化症,視神経炎,HTLVーI associated myelopathyにおけるパタ-ンリバ-サルERG・VEP同時記録」の各研究が実施された。ERG/VEPと年齢の相関をみると,ERG・VEPともに加齢の影響を受け,有意な2次回帰相関が得られた。Transient VEPのピ-ク潜時からTransient ERGのピ-ク潜時のピ-ク潜時を引いた差をRetinoーCortical Time(RCT)と定義すると,RCTと年齢の間に有意な2次回帰相関が得られた。次いで振幅と年齢の相関について検討したところ,ERG振幅が加齢により有意の減衰を示したがVEP振幅は加齢の影響を受けなかった。パタ-ンERG・VEPの性差について検討するとTransient VEPの潜時は男性の方が有意に長かった。振幅の性差ではVEP振幅がTransient,Steadyーstateを問わず女性の方が有意に大きかった。振幅と頭囲の相関についてはTransient,SteadyーStateを問わず、VEP振幅が頭囲と負の相関を示した。以上の正常デ-タを背景に臨床応用を試みた。その結果、パタ-ンERGが正常で,VEPの潜時が延長する例,パタ-ンERGが消失または低振幅化,VEPに潜時延長を認める例,パタ-ンERG・VEPともに消失する例などがあった。本研究成果により(1)視神経の純粋な脱髄病変,(2)軸索喪失と神経節細胞の永久的な変性を伴う視神経病変の区別が可能となった。本研究により、HTLVーI associated myclopathyの視神経病変を示唆する結果も得られた。本研究により,パタ-ンリバ-サル視覚誘発電位の臨床応用はさらに有効かつ実用的になり、潜在的視覚伝導障害の検出に寄与するものと確信する。
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