研究概要 |
我々は前年度までに脳虚血の受動的回避反応と脳グルコ-ス代謝におよぼす影響を検討した。本年は脳虚血のセカンドメッセンジャ-系に対する影響を検討するため、砂ネズミ一側半脳虚血モデルにおいてオ-トラジオグラフ法により、forskolin(FK)とphorbol12,13ーdibutyrate(PDBu)の最大結合量(Bmax)と解離定数(Kd)局所脳血流(lCBF)とともに同時に測定した。砂ネズミ9匹を用い、対照群、30分虚血群、6時間虚血群の3群に分けた。ハロセン麻酔下に右総頚動脈を結紮し、30分または6時間後に ^<14>Cーiodoantipyrineを静注し、断頭した。厚さ20μmの連続切片を作製し、lCBF測定用脳切片はそのまま感光した。FKおよびPDBuーbinding用はpreincubationの後に ^3HーFKは5,10,30,60,90,150nMの各濃度で、 ^3HーPDBuは2.5,5,10,50,100,150nMの各濃度でbinding施行し感光した。これらのオ-トラジオグラムは画像解析装置で定量的に分析し、lCBF,FKおよびPDBuーbindingのBmaxとKdを求めた。(1)Bmaxの変化:(1)30分虚血において、FKでは虚血側のBmaxは非虚血側より低置(88%)を示したが、対照群より軽度高値(114%)であった。PDBuでは虚血側のBmaxは非虚血側と明かな差はなかったが、対照群より高値(130%)であった。(2)6時間虚血において、FK,PDBuとも虚血側のBmaxは対照群より低値(65ー72%)であったが、非虚血側は対照群より高値(107ー132%)であった。(2)Kdの変化:FKおよびPDBuーbindingのKdには、30分、6時間虚血とも虚血側、非虚側間に明かな差は認められなかった。結論:Adenylate cyclase系とphosphoinositide系は虚血早期には虚血側、非虚血側の両方で活性が高くなるが、虚血6時間後には虚血側の活性は低下し非虚血側の活性は高値を持続すると考えられた。
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